412■カマトトと男のずるさと『大津順吉』
成り行きから
志賀直哉の『大津順吉』を読みなおしています
付箋がしてあるので、過去に読んでいるはずですが
すっかり読んでいたことを忘れていました
読みなおし始めると、思い出したりするもので
当時の感想なんかもつらつら出てきます
それは、やっぱり今とは違う
たとえば、ここ
大津順吉が、
「姦淫は殺人と同程度に大きい罪悪である」
という言葉から、
「恐ろしく不愉快な響きを受けた」
心境を語るところ。
それは私の「心」と「体」とが絶えず恋する者を捜しながら、「境遇」と「思想」とにさまたげられている、その不調和が苦しくて苦しくてならない時だったからでもあった。
この感情から、紆余曲折しつつも
下女の千代を「恋する者」にするのですが、
わたしは結婚の事はひと言も言わずに千代がどう自分を思うかを尋ねようというつもりであった。私はまわりくどい、自分でもよくわからない事をしきりに言っている。それが、自分の思っていることはすっかり言わずにむこうの思っていることをすっかり聞こうというようなずるい態度であった。そのうちに自分でもそれがみにくくてみにくくてかなわなくなってきた。
千代は思っている、しかし思っても、どうにもなりはしないからあきらめている、という意味の返事をした。
そこで私も何もかも露骨にきいてしまおうという気になった。
露骨にきく気になるのが遅いよ…順吉
このとき、うっかりと千代は
「(順吉を)思っている」なんて返事をしたから
突然首を抱かれて接吻され、
気を失いかけ、
そのうち性交することとなり
いつのまにか周囲から暇を取らされ
田舎に下げられます
このとき、千代は素直に返事なんかしないで
もう、カマトトぶるしかなかったんじゃないか…
カマトトぶった方がよかったのに…
とわたしは思います
千代に少しでも順吉への好意があるなら、
なおさら!
このときの順吉の「ずるさ」は
男の事情で「板」しか出さないようなもの
なのですから
そのまま蒲鉾のせちゃいけない!
と思うわけです
運悪ければふんだりけったりになります
たとえば、周囲からも
順調な人生を送っている男でも
色仕掛けの女が現れれば
気が迷うだろうって
面とむかって言われたりすることでしょう
はじめから何もかも露骨に言えるような
勇気のある誠実な男性が
千代の一生のあいだに何人現れるかわからないけれど
千代は、大津順吉に
一瞬だけ「下女のくせに、カマトトぶるな!」とか
逆ギレされて、それこそ露骨に悪態つかれた方が
まだ未来があったような気がしました
切ない形だけれど、順吉との未来もまだ
男のずるさとカマトトはセットですよね?
と、つらつら思う週末です。


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